† とても良い出来のフィナーレ †

ちょっと前に 面白さに気付いた 『ジュエルペット サンシャイン』がついに最終回に。

ジュエリーナ様暴走の昭和ネタから始まったラストパート、 ドタバタ パロギャグの連発から、どう一年を締めくくるのか、不安もあったんだけど。

このアニメで感心したのが、この３点だと思う。 「伏線を回収して ストーリーとして きっちり終わらせた」 「ギャグを 何時いかなるときも きっちり やり続ける」 「実は テーマが深い ラスト」

ギャグやパロを散りばめながら（寺尾聰のルビーの指輪までも流れ）、次第にラストの対決へと視点を向かわせる。 次々に 慣れ親しんでいたジュエルペットが倒されていき、徐々にクライマックスへ持ち込んでいく展開。

でも ダージョ様を倒す武器が 「ちくわ笛」という 伏線回収的なギャグ。 一瞬 笑ってしまうけど、それでも なぜか クライマックスの雰囲気を壊さないという 見事な匙加減。

子供向けアニメであることもあって、最後は 誰も死なせない（ジュエルペット復活）　みんなで平和を取りもどした。

卒業式と その５年後のみんなの動静が、これまた濃い内容だった。

とくにスゴイのは 御影くんエピソードだろう。

卒業式になっても姿を消したままの御影君。 同窓生が再集結した ５年後のイルカ先生とジル先生との結婚式にも、姿を見せない。

そのあと、　最後まで 夢も 行く先も 見つからないままのルビーが 孤独に佇んでいたときに、姿を見せた見知らぬジュエルペット。

・・・それは 人間という肉体を捨て、ジュエルペットになった御影君であった。 ジュエルペットのルビーと 新たにジュエルペットとなった御影君との 湖面に映り出された 抱擁とキス。

ジュエルペットへの愛のために、人間をやめて ジュエルペットになるという展開。 「好き」では留まることもなく、「愛しあう」ために 人間をやめてしまう･･･。

ペットが好きとかいうことレベルではない。 「ジュエルペットと人間の愛」ならば 他のキャラでも描かれていたが、御影君とルビーの場合は 一味違う。 これは 狂気をも厭わない 全身全霊を投じる愛 なのである。 オトナ的に言えば、「セックスを求めるための愛」と言って良いかもしれない。

「ジュエルペット」と「人間」が結ばれるハッピーエンドなら、 「ジュエルペット」のルビーを人間にする展開が普通であり、無難だろう。 ルビーが綺麗な女性になって、御影君を結ばれる・・・なら、こんな判りやすいラストは他に無い。

しかし、「ジュエルペットサンシャイン」のラストは、 「人間を捨てて、ジュエルペットになる」だから、感情的に複雑な余韻を残すものとなった。

愛するために 自分の生まれを根本から塗り替えてしまう。。 この世間からすれば驚愕な展開は、 「愛する同性との愛のために　性転換をする人」を描いているといっていいかもしれない。

「愛とは何か、愛するために どこまでしなくてはならないのか」という問いかけでもあり、 「愛のために 性や生態までも刷新してしまうという、暴力的な怖さまでもある 愛の力」という表現ともいえる。

こんなの、普通の人間には 付いていけない。「狂気的な究極的な愛」といって良い。

その顛末の最初から最後までの数少ない目撃者となっていた ラブラの 背中から漏らす一言。 「夢が叶って 良かったラブ･･･」 。

笑顔を見せないまま 立ち去る この一言は、そのハッピーエンド⇔バッドエンドの判断の難しさを表現していると思う。

ラブラからすれば これ（御影くんのジュエルペット化）がハッピーエンドとは理解できないのかもしれない。 けど、当の本人達が 幸せを感じているのなら、良かったっていえるんだろうね。。。というスタンスを感じさせる。

でも、愛の暴走って、そういうものだよね。 周りは決して 幸せになれるなんて思えないし、交際を反対する。 けど、本人達にとっては 幸せだし、本物の愛なんだと主張する。

「幸せ」「夢」「愛」。 こんな深いテーマを 安易なハッピーで終わらせず、複雑な余韻を残して終わる。 子供アニメの中で、ギャグの中で、考えさせるとは、恐ろしいアニメだなぁ・・と笑ってみたり。

近年に無い 味わいのあるフィナーレを見せてもらったと思う。