† 『うさぎスマッシュ』＠東京都現代美術館 †

まず この企画展、名前からだと 中身が ちょっと判りにくい。 「今、流行りの Kawaii 系の展示か？」と誤解されそうだけども、 実際は 違うんだな。

今回の企画展、「美術」とか「ＡＲＴ」という先入観は当たらない。 何か、画期的な、何か不思議な、科学や社会という現象の解釈分析に芸術という観点を持ったものだ・・・という こういう説明さえ野暮だよなぁ。

とにかく、展示しているものの ごく一部を紹介。

［社会組織をアート化］個人を取り巻く世界を イメージマップ化

これは 個人を取り巻く社会を、緻密な分析の上で 記号的に地図化したものである。 まるで 細胞とウイルス感染の説明のようだ。これでも まだ片面である。全てをご覧になりたい方は 東京都現代美術館に行ってみて。。

あちこちに 聞いたことのある団体や組織や企業、聞いたことのない団体や組織、それらが 色々絡み合っていて、 普段のニュースでは見えてこない 不可視の存在を感じることができる。

よく見ると、世界の食糧市場を牛耳る存在、軍産複合体の利権構造、経済に大きな影響を与える存在、ひそかに莫大な利益を得ている存在のようなものが見え、 静かな恐怖さえ抱いてしまう。

それこそ 某雑誌の「世界陰謀説」の眉唾レベルではないものが、その大きなイメージマップが 自分に襲い掛かってくる。

ただ社会の構造をイメージしているだけなのだが、どこか 恐怖や怒り、感動や好奇心のような 様々な感情を抱かせるのである。 それは 芸術品の持つイデア そのものである。

［生物工学をアート化］生物がそのまま工業製品になる

この写真は 一見、普通の古い博物誌か植物図鑑の図絵のように見える。

しかし、これが 農薬散布機の部品だと言ったら、理解できるだろうか。

このまま遺伝子工学が進めば、生物を遺伝子的に設計することが可能になるだろう。

農薬を生成し、果実にする植物。それが そのまま 農薬タンクになる。

チューブ状の根を生成する植物。それが 農薬のチューブになる。

トマトのような実と種で、ノズルが出来る。

他にも、農薬の実に穴をあける注射針の実、吐出量の調整する器具の実、ハンドルを作る植物などなど。

このように 遺伝子設計した様々な植物を組み合わせれば、それがそのまま農薬の入った農薬散布機に組みあがる。 （右下の完成図参照）

この他にも 動物を使って、透析機械として用いるとか・・・といっても、殺すとか臓器を取り出すとか ではないのです。 透析用羊を開発し、昼は普通に飼い、夜に血管を繋げて 羊に透析してもらい、血液を交換する。・・・というのもあった。

これらは、画期的で、臓器摘出などで生命を絶つこともない、生命の共存化は 或る意味 素晴らしい技術であるが、 それら 生命を工業的な形で適応化させることは、どこか 怖くて、どこか 畏れ多い、複雑な感情が沸き起こる。

芸術はよく判らん！という方も、科学や社会の どこか奇妙な未来技術や画期的な概略図などが楽しめるのではないかと思う。