† やっと辿り着いた松濤美術館「ねこ・猫・ネコ」展 †

一旦、原宿に寄って、気になった品物を購入してから、遅い昼食。そのあと、すぐに渋谷に向かいました。

しかし、目的地が一向に見つからない。

渋谷で通ったことのない場所に行ったこともあるけど、タブレットPCが使い物にならなかったのも原因だった。（スマホじゃないので）

モバイルルーターを姉に強奪されてしまったために、地図とか調べようにも タブレットPCが繋がらないんです。望みをつないだ渋谷駅周辺だというのに、満足なWi-Fiスポットも無いんですね。

暑い日で、下したてのブーツで、あちこち歩き回ったために、靴擦れが酷くなっちゃったよ。

まさか 宇田川町のＮＨＫ本社屋に遭遇するとは。

諦めて 渋谷駅に戻ろうとしていた時に、やっと発見しましたよ。

松濤美術館です。

この近くに、立派な豪邸の高級住宅地があるんですが、 私は道に迷って、その豪邸の地区の方から来たため、これも豪邸の一軒と思いそうになりましたよ。

とにかく、初めての私には ちょっと判りづらい場所でした。

展示内容は 猫の美術品の企画展。ＮＨＫの日曜美術館を見ていて知ったのですが、 原宿のキャットストリートの近くとかにも、この松濤美術館の猫企画展示の告知が貼り出されていたところをみると、 今回 よほど集客に力を入れているようですね。

まぁ、美術というものにあまり関心の無い方には、こういう「猫」という一般的に人気のありそうな企画は訴求力はあるんでしょうね。 こういうことも必要だとは思います。

私が興味を持った作品作家を一人挙げるとすれば・・・。

朝倉文夫の塑像ですね。この人の作品はどれも良かったのだけれども、 とくに、「よく獲たり」という 捕まえたばかりのネズミを咥えている猫の作品。

この人の作品の特徴は、猫の動態を見事に捉えている点です。

この作家は、ネコ好きで 猫をたくさん飼っていたらしいのですが、 だからこそ、その場面の切り取り方が素晴らしいです。

とかく表現とか手法とか流派に囚われることが多いですが、 そもそも その場面を見事に切り取る・・というのは、芸術家には 重要なことです。

この作品、鼠を咥えた猫の不安定な姿勢からは、「何か 決定的な瞬間と捉えた！」という感がにじみ出てきます。

あと、猫の眼の造形です。 一見 全体は塑像のゴツゴツ感で雑さを感じるのだけれども、眼の部分は 心血を注いだような繊細さがあります。 瞳孔を描いているわけではないのに、その眼差しの視線が見えるようです。

これは 実物を間近で見ないと判らないと思います。

猫がネズミを捉えて咥えている時って、捉えた鼠そのものよりも 何かその遠くを見ているようなときがあります。 この塑像はまさに その時の猫の目なんですね。

鼠を捉えた興奮がまだ醒めきれない猫の姿って感じです。

あと、鼠の薄い皮膚の表情が良いですね。 猫に咥えられて、引っ張られる薄い皮膚には、生き物の皮膚と骨格と内臓が見えてきそうです。

この人の作品、もう一つ、「親子猫」という作品もあります。

この３匹の子猫が どこがどうなっているのか判らないくらいに 一塊になって、 それが親猫の中から垣間見えるのが、良いですね。

写真では２匹に見えるけど、実際には３匹なんです。 真ん中の子猫は 向こう側で顔を出しているんですよ。

この朝倉文雄の美術館が 東京都台東区にあるらしいので、機会があれば そこにも行ってみたいと思います。

私は猫好きだけど、この企画展で猫を集めたから良かった・・という感想は持たないですね。 むしろ、その表現とかに楽しみを見出すタイプなので。

あと、竹内栖鳳の「酔興」とか、岡本一平の「漱石先生」は、洒脱で面白かったです。

あと、猫とか関係なしに 牧尾邦夫の「白い憂羅」の女性の裸体の色が凄かったな。 太陽の自然光による黄色みを帯びた表色と、部屋の照り返しの緑を帯びた裏色の織りなす 精緻な描写の女性の裸体には、 ずっと惹き込まれました。